2021年の夏によく聴いた新譜7選
情報化社会と呼ばれて久しい世の中ではありますが、COVID-19とオリンピック中心にここまでトゥーマッチに色んな情報が入り込んだのは初めてでかなりしんどくて、逆に無みたいな気持ちにもなった夏でした。
そんな夏によく聴いた新譜を振り返った記事です。よろしくお願いします。
■Drinking Boys and Girls Choir「Marriage License」
韓国のバンドの2ndアルバム。おとぼけビ~バ~やSay Sue MeもリリースしているロンドンのDamnablyより。
韓国社会のLGBT+コミュニティの中にいる彼女らの社会への怒りが軽快でポジティヴなバイブスとして発散されたキャッチーなポップ・パンク。20分ちょっとであっという間に駆け抜けていきます。
“Someday we can be happy without hate” (いつの日か憎しみなく私たちは幸せになれるでしょう)
■Instupendo「Love Power A-to-Z」
ブルックリン拠点のアーティストによる2ndアルバム。
"Hyperpop"の文脈もあるエレクトロなトラックですが、盛り上がりすぎない展開とささやくようなヴォーカルのおかげで見上げた夜空に流れ星を見つけたようなささやかな喜びがある。それこそ星のカービィシリーズの中でも「夢の泉の物語」のBGMが好きな人にも勧めたい。ただその中でもOil XLとコラボした「Ribbon Bone [Silk Chaser]」はどのジャンルの棚に入れたらいいか迷うほどぶっとんでる。
■The Killers「Plessure Machine」
Phoebe Bridgersも1曲ゲストで参加したラスベガス出身のロックバンドの7thアルバム。1stアルバム以来に聴きました。
アメリカのバンドだけどUKっぽいニューウェイヴ・ロックというのが彼らへの認識だったのですが、この新作はハートランド・ロック要素が強くアメリカの音楽っぽい。爽快感ありつつメランコリックで、海岸線をドライヴしながら聴きたくなるような1枚。昨年Bruce Springsteenと一緒にシングル出してたのでそこから影響を受けたのでしょうか。こういうのはどうしようもなく好きですね…。
■KM「EVERYTHING INSIDE」
日本のヒップホップ注目株のプロデューサーの2ndアルバム。
Daichi Yamamoto、田我流、C.O.S.A.といった個性豊かなゲストが参加しつつもアルバムとして統一感がある。メロウなエレクトロと音割れのノイズの塩梅が絶妙で、硬質な印象だけど同時に温かみも感じる。その中でも「Every Time(feat. HNC & MANON)」のクライマックス感はすごい。
■ランタンパレード「love is a mystery」
昨年にライブアルバムをリリースしたが、アルバム自体は久々のランタンパレードの新譜。
「踊れる」より「聴かせる」タイプの生バンドによるディスコ・ポップ。実は昨年でたライブアルバム「ブルードリーム」でハマって旧作を何作か集めては初期の方が好きだな~とな思ったりもしたのですが、この新作は聴けば聴くほど良くなってきていて、そういうこともありオススメです。
■Scotch Rolex「Tewari」
ウガンダのNyege Nyege Tapes傘下のHakuna Kulalaからリリースされた日本人プロデューサーのアルバム。今年Sub Popからシングルをリリースしたアフリカのメタル・バンド、DumaのLord Spikeheartもヴォーカルで参加。
トライバルでトラップでメタル、グライムもゴムもごちゃまぜのカオティック・サウンド。しかもタイトル曲はゲームボーイ風ビットチューンという謎。わけわからな過ぎて聴くと元気になる。
■月ノ美兎「月の兎はヴァーチュアルの夢をみる」
長谷川白紙、NARASAKI、堀込泰行、いとうせいこうetc.とマニア(大きなお友達)も喜ぶ面子が楽曲提供したことでVtuber文化を通ってない人も注目の委員長1stアルバム。とにかくアルバム前半の流れが神で、特に長谷川白紙のヴォーカルのクセも再現してみせた「光る地図」、大槻ケンジ・NARASAKI提供の最近のディーパーズよりディーパーズしたシューゲイズPOP「浮遊感UFO」がたまらなく良い。そのあと流れぶった切る「みとらじギャラクティカ」もキャッチー。
各作家の個性が容赦なく出たアルバムだけど、そこに吞まれつつも乗っかる月ノ美兎自身の丁寧な歌い方と色気のある声質がアルバム内で一番魅力的に映る。