2022年ベストアルバム20


振り返ればマジで色々あった2022年のベストアルバム記事です。

個人的なことでいえば7月についに新型コロナウィルスにかかりました。
幸い38度の熱が出た程度でたいしたことはなく、後遺症も喉が少しひっかかる感じが1か月ほど続くくらいでした。皆さまもご自愛ください…。




次点:
The Beths - Expert In A Dying Field
Cwondo - Coloriyo
No Buses - Sweet Home
東京酒吐座 - 月世界遊泳 -Moonworld Playground-
Two Shell - Icons EP




20.WBSBFK - Grotesk

名古屋のノーウェーブバンドによる2ndアルバム。
空間を切り裂くような冷たいギターの音もそうだが、1,2分台で終わる曲の短さがそのままカッコよさに繋がっている。ミニマル、クールネス。

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19.Druida - Limnociclo

IDMグリッチ、フォークトロニカといったサウンドをvaporwave的手法でレイヤーを重ねた万華鏡的電子音楽。ついついGold PandaやSpazzkidといったアーティストを思い出してしまう。

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18.MATTIE - Jupiter's Purse EP

Black Taffyと共同プロデュース、Matthewdavidがミックス&マスタリングという体制で制作されたデビューEP。指の隙間から砂がこぼれていくような崩壊気味のメランコリックなエレクトロ・ソウル

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17.Enumclaw - Save the Baby

「オアシス以来のベスト・バンド」を自称するロックバンドのファースト・アルバム。
90年代インディーへの甘い郷愁を抱えたパーソナルなグランジロックはスタジアムで鳴らすにはあまりにナード過ぎる気がするけど、それはそれとしてメロディはマジで全曲良い。

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16.caroline - caroline

アートワークから連想されるような退廃的な景色の中で8人の音楽集団が奏でる美しきアパラチアン・フォーク・ロック。体調が悪いときにこそ響く音楽というのがあって、そういう時にすごく合った音楽だった。

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15.Steve Lacy - Gemini Right

今年の「なんか売れてるから聴いたら良かった」枠。ブラジル音楽のビートとサイケデリックな質感を持ったありそうでなかった郷愁的なローファイ・ソウル。今まで客演では好きだったんだけど…ってタイプのアーティストだったけど今作で一気に中毒になりました。

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14.kurayamisaka - kimi wo omotte iru EP

アートワークの2人の少女について歌った6曲(+ボーナス1曲)入りのコンセプトEP。
儚く切ないギターロックに憂いを帯びたウィスパーヴォイスが乗っかった結果、ロードムービー的な良さがある。CD版限定ボーナストラックの「さあ冒険だ」のカバーを聴いてると頭の中で勝手にエンドロールが生成されていく。

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13.Little Simz - NO THANK YOU

全編InfloプロデュースということでSAULT feat. Little Simzという感じもするが、今年アルバムを6枚ほど出したSAULTのどのアルバムよりも気に入った。前作は作りこみはすごすぎて聞き入るスキを見いだせなかったが、今作はラフでかっこいい。1曲目「Angel」がメロウで内向的に始まるのもムーディーで良い。あとやっぱりLittle Simzのラップはめちゃくちゃかっこいい。

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12.yubiori - yubiori

最初聴いたときは北海道のバンドかと思ったくらい北国由来のエモを鳴らしている横浜のロックバンドの1stアルバム。ドラマチックで力強いロックナンバーにアルペジオが美しいスローナンバーも入ってる充実の1作。生活に乾杯!

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11.Laura day romance - roman candles | 憧憬蝋燭

乱暴に例えるならClairo「Sling」とHomecomings「Whale Living」の間にある音楽で、日々を生きる上でのやるせなさに寄り添う優しくて寂し気なインディー・フォーク・ロック。井上花月氏のため息を吐くようなヴォーカルも魅力的。

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10.Alex G - God Save the Animals

ベッドルームから抜け出してスタジオで録音された9thアルバム。
録音環境が良くなったために前作「House of Sugar」にあった魔法のようなフィーリングは消えてしまいそこが寂しくないといったらウソになるが、子供のいたずらみたいな奇妙に捻じ曲げられた声の連続に思わず笑ってしまう。Frank Ocean「Blonde」への参加が話題になったのも今は昔というレベルで、Japanese BreakfastやClairo、Sorryといった色々なミュージシャンに愛される存在になったSSWの待望の新作がこれでいいのか!と思ってしまう傑作。

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9.TEMPLIME+星宮とと - skycave EP

フューチャーファンクや2stepを取り入れた今年一番爽やかな夏のエレクトロ・ハウス。このEPから遡って過去作も聴いたけど、今作が一番2000年代前半J-POPのにおいがして好きだった。

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8.Big Thief - Dragon New Warm Mountain I Believe in You

4カ所のスタジオ(+ホテル)で録音されたという音響フォークロック2枚組アルバム。でもそんな気負わずにただバンドで鳴らしましたみたいな自然体の態度で進んでいく凄味のない凄いアルバム。名古屋クラブクアトロで観た来日公演もひたすら楽しそうだった。

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7.the hatch - shape of raw to come

より本能的へ、より構造は複雑へ。山田みどり氏のヴォーカルは叫ぶ方より歌う方へと変化していったら結果的に狂気的な印象が増幅した。ミュータント・パンク・ジャズ

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6.Black Country,New Road - Ants from Up There

チェンバーポップにカンタベリー、ポストロック、スロウコアを横断して奏でるプログレッシブな2ndアルバム。Isaac Woodの内に熱を帯びたヴォーカルも固有名詞の多い歌詞も良かっただけに脱退は残念。ただ元々、昨年1stアルバムを出した時の配信ライブで一切1stの曲やらずに今作の曲を演奏したバンドなのでそこまで心配せずに待っている。何より配信で観た新曲ばかりのフジロックのライブも良かったし。

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5.OMSB - ALONE

孤高。孤独。

1人の人間であることをひたすらラップするその様は、気を付けていても過多の情報に振り回されてレッテルを貼っては次へと進もうとする自分への強烈なカウンターになる。言葉が刺さる作品だけどトラックもメロウだったりハードコアだったり色々あって聴いてて楽しい。

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4.Culprate - αριθμός τέσσερα (Number Four)

思わずNetflix映画「アナアレイション」の極彩色の美しくて生気のない景観を思い出した。フォークトロニカ、IDM、サイケ、プログレといったジャンルが乱反射された異形へと発達したかのような世界観。
後追いで知ったんですが最初はEDMプロデューサーとしてデビューしたんですね。なんでこうなったんだろう。

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3.Fontaines D.C. - Skinty Fia

若手ポストパンク・バンドの中では飛びぬけて勢いのあるFontaines D.C.の耽美で情熱的でアイロニカルなロックンロール。ねばりつくような歌い方も湿気の多い日本の気候とマッチしていて夏場によく聴いてました。

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2.Nilüfer Yanya - PAINLESS

ストパンク・リバイバルとフォークソウルの狭間から放たれた歌は感傷的で、でも必要最低限の音で。このサウンドからBloc PartyNew Orderといった名前を思い浮かべることは簡単だけどオリジナルとしかいいようがない。それでいて自分にとってあまりに好みすぎて逆に不安になるような音楽。

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1.valknee- vs. EP

“ねえ邪魔するばっかじゃん
結局羽がもげてる My feathers fallen
この社会のマッドネス性
ボロボロになって鍵垢にシュッ”

“後から良さに気づいたって
あたしはもうそこにいないよ
1日、たった1日で変わっちゃう
まるでGoogleのトップみた〜い”

社会にも自分にも対峙しながらハイスピードで駆け抜けていく武装ギャルのエレクトロ・クラッシュなダンスミュージック。倍速視聴で映画を見てる人をバカにしつつYouTubeでまとめ動画をクリックしてしまうような自分に刺さってしまう罪深き中毒性を持った5曲12分。コロナ療養中後半の体調が良くなって部屋の中で退屈を持て余した時にこのEPで踊ってました。

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というわけで1位にvalkneeの7月に出たEPです。今年はEP程の長さで統一感がある作品が一番肌に合った気がします。



あと余談です。

12月21日に11年ぶりリリースされた麓健一「3」はライブでは弾き語りで聴いたときの良さが石橋英子氏によるアレンジで別の良さへと変貌しており、それを消化するにはまだまだ時間がかかりそうなので今回の記事からは外しました。「ヘル」や「幽霊船」がタイムレスな名曲だとはすでにわかっているんですが。
まあ、でもそもそも1月リリースしていようが良さが分かるのは何年後みたいな事もよくある話で、この記事は自分の1年を振り返っている12月最終週の自分の気持ちのバロメーターだと思っていれば幸いです。
そもそもすべての創作物は年間ベストにまとめられるために存在しているわけではないという当たり前の話なんですが、まとめ記事によって見逃していた作品を見つけるのもまた事実。自分が挙げた作品の中でも気になって聴いてもらえれば嬉しいです。