2019年の夏に聴いた新譜
すでに9月リリースラッシュが来ていますが、ギリギリその前に。
■Bon Iver「i,i」
前作「22,A Million」はプロデューサ目線で作られた曲みたいなところがありましたが、破壊的なアレンジそのままでシンガーソングライターの目線に立って歌われている。「“33"GOD」級の名曲はないけど、アルバムとしてはこっちのほうが好き。
Bon Iver - Salem - Official Lyric Video - YouTube
■BUMP OF CHICKEN「aurora arc」
ほぼすべて既発曲で編集盤扱いでいいんじゃないかという気持ちにさせる9thアルバム。ただもうそこまで追っていなかった自分みたいな人間には結構良いアルバムで、というか前作「Butterfly」は全然響かなくて心が離れていきそうになっていたので良かったです。割と自分たちのルーツであるトラッドフォーク色が光っている作品なので、過去作だと「スノースマイル」、「車輪の唄」が好きな人が気に入るかも。
BUMP OF CHICKEN「Aurora」 - YouTube
■black midi「Schlagenheim」
スピーカー越しではポストパンクに聞こえて、イヤホン越しだとマスロックに聞こえるしなんかようわからん。歌い方もふざけているのか判断に迷う時もある。再び活気づいてきたロンドンのパンクシーンの中の台風の目であり、異色の存在でもあると思います。
black midi - ducter - YouTube
■Daisies「What Are You Waiting For?」
DFAからリリースしていたCCFXのメンバーが新たに結成したバンドの1stアルバム。基本的にはドリーミーなエレクトロ・ポップですが、時折入る急に夢から覚めてしまいそうな無機質で不穏な展開が癖になる。アルバムタイトルに対しての10曲目のトラック名も正しくインディーしていて良い。
DAISIES - "Anyone’s Style" - YouTube
■Florist「Emily Alone」
Emily A. Sprague名義でドローン・アンビエント作品をリリースしているEmily Sprague率いるバンドによる3枚目。バンド名義ではありますがタイトルにもあるように実質Emilyソロによる宅録アルバムであり、ささやかなシンセやフィールド録音に彩られた瞑想的なフォークアルバムであります。シンプルにメロディが美しい。
Florist - Ocean Arms (Official Audio) - YouTube
■Greys「Age Hasn't Spoiled You」
トロントのバンドによる3rdアルバム、今作で初めて聴きました。公式ライナーノーツにはクラウトロック、インダストリアル、ヒップホップ、ダブ、ドローンetc.に影響受けたと書いてあったように様々な影響を感じさせるノイズロックですが、ささくれだった衝動というよりは安らぎを覚えるのは3枚目まで来て覚えた余裕でしょうか。とりあえず2曲目で惚れました。
Greys - "Arc Light" (official music video) - YouTube
■堀嵜菜那「壺」
愛知県半田市出身のシンガーソングライターによる初アルバム。エレキギターによるアシッドフォークで、日常の静けさとやるせなさを思い浮かべる1枚ですが、展開が歪でたまにマスロックかと思う瞬間がある。個人的にはnhhmbaseを思い出しました。
顔-face- from 1st album "壺/pot" by 堀嵜菜那/Horisaki Nana | Free Listening on SoundCloud
■J. Ka Ching「Another Vanishing City」
モントリオールのトラックメイカーによる初作品、AVYSS Magazineの記事で知りました。記事にもあるように中国の撥弦楽器である古筝の音色とPC Muisic譲りのバブルガムベースに耳は引きますが、結構様々なアプローチで攻めてくるので飽きずに最後まで聴けるアルバムの流れが出来ているのが重要。
J. Ka Ching - Yearning 4 the Ideal by Quantum Natives | Free Listening on SoundCloud
■The Murder Capital「When I Have Fears」
1曲目の「For Everything」からとばしてくるギターを掻き毟る系ポストパンク。アルバム全体に不穏な空気を漂わせる系ポストパンク。数ある1stアルバムの中でも強くエネルギーが煮えたぎっていて、それでいて頭でっかちになっていないのがすごい。
The Murder Capital - More Is Less (Official Audio) - YouTube
■Mister Lies「Mister Lies」
自分は全然知らなかったですが、“ポスト・ダブステップ”というワードが流行っていた時期にデビューしたアーティストらしいです。その最新アルバムは初期Letting Up Despite FaultsとBaths「Obsidian」の間にある、音の重なりが気持ち良い内省的なエレクトロポップ。
Mister Lies - Mister Lies (Full Album) - YouTube
■ナツノムジナ「Temporary Reality Numbers」
海面に反射する陽光のように眩いギターが郷愁を誘うサイケデリック・サマー・ロック。すっかり過去のものにされたテン年代前半の東京インディーが持っていた素朴さが、テン年代最後に復権してきたように考えられるが、逆に完璧にここで終わらせてやろうとする野心も感じる。「タイトロープ」のサビとかわけわからん。岡田拓郎氏サウンドプロデュース。
ナツノムジナ - 煙の花束 / natsunomujina - Kemuri no hanataba(Official Video) - YouTube
■Oso Oso「Basking In The Glow」
何も特別なことが起きなかった1日にピッタリの、ナイーヴで牧歌的なエモ。今夏によく聴いたけど、こういうサウンドは秋になってからより楽しめそう。
oso oso - "the view" (official audio) - YouTube
■Sacred Paws「Run Around the Sun」
アフロ・パンクにジャングリー・ポップ、それにエモを感じるグラスゴーのバンドの2ndアルバム。アフロ・パンクの要素は10年前ブルックリンが最先端だと吠えてた時期を思い出させるには十分の陽気っぷり。でも過去に流行っていたサウンドにはならない輝きがこのアルバムにはある。
Sacred Paws // Almost It (Official Video) - YouTube
■Sleater-Kinney「The Center Won't Hold」
今年頭にSt.Vincentプロデュースというニュースを目にした際からどういう音になったか気になっていましたが、St.Vincentプロデュースしたとしかいいようのないアルバムで微笑ましくなってしまった(特に4曲目のギター)。元来の武骨さとSt.Vincent由来のグラマラスな輝きが混ざり合ってオルタナティヴの最前線は更に混迷を極める。
Sleater-Kinney - Can I Go On (Official Lyric Video) - YouTube
■South Penguin「Y」
湿度が高い音の質感でサイケデリアとファンクネスが炸裂するも妙に喉越しが良い待望の1stアルバム。ありそうでないサウンドスケープ。ナツノムジナに続いてこちらも岡田拓郎氏サウンドプロデュース。
South Penguin - air feat.荘子it (from Dos Monos) (Official Music Video) - YouTube
■Vanishing Twin「The Age of Immunology」
Broadcastのメンバーが関わっていて、復活したStereolabのO.A.を務めているバンドの2ndアルバムはStereolab~Broadcastの系譜の最新型でその2バンドと比べてコズミックなサウンドになっており、系譜の最新型としてはこれ以上ないんでしょうか。
Vanishing Twin - Magician's Success (Official Video) - YouTube