2017年フェイバリット・ラブソング10選
©窓ハルカ「漫画として現れるであろうあらゆる恋のためのプロレゴメナ」
正直いうと、単なる年間ベストより今年どんなラブソングを聴いてあの娘のことを夜な夜な想っているのかの方が知りたい部分はあるんですよね。
— アブラ (@abura_1991) 2017年12月14日
というつぶやきを思い付きでしてしまったので、言い出しっぺの法則で10曲選びました。
A to Z順です。
■Cornelius「あなたがいるなら」
“ただ みてるだけで
なぜ わけもなく
せつなく なるの だろう”
A to Z順であるが故にいきなり本命です。「Point」以降salyu×salyu経由の、間を生かしたCorneliusの歌唱法が、初めて恋をした相手と喋るようなたどたどしさと結びついて、これ以上ないってくらいの詩情が漏れ出る新たなる代表曲。正直この新しさをアルバム全体に求めてしまったために、「Mellow Waves」の他の曲はそこまで聴いてない…。
Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here" - YouTube
■橋本絵莉子波多野裕文「ノウハウ」
“小さな君も
大きな君も
中ぐらいの君も
わからないくらい
好きよ”
チャットモンチーとPeople In The Box、2バンドとも持っているオルタナ成分は鳴りを潜めて、シンプルなアレンジでうたを聴かせるピアノと声のみの素朴なバラッド。「染まるよ」「橙」みたいな重厚感はなく、あくまで丸みを帯びた音の鳴り方。ただ上のフレーズはめちゃロック。
■堀込泰行+D.A.N.「EYE」
“もう大人になったんだ
だから恋がしたい
耐えられないような
狂おしさ”
忍び寄る絶望を後目に、巷にあふれるメロドラマのように恋愛力学で得る全能感を欲しがるダーク・エレクトロ・ソウル。この世はもっと美しいはず。DAOKOとのコラボでも思いましたけどD.A.N.のサウンドってビックリするくらいD.A.N.ですね。強烈な記名性。
■LOSTAGE「僕のものになれ」
“「お願いそばにいて」 何も要らないから
僕は言う 何度も僕は言う”。
LOSTAGEでここまでストレートなラブソングは初めてでは。
この曲含む最新作「In Dreams」はライブ会場、THROAT RECORDS店頭もしくはオンラインショップのみで販売しており、そういった流通形態も手伝って、今までになく体温を感じる、これまで歩んできた苦みと共に。それこそアナログフィッシュ「抱きしめて」と共振するような黄昏のフィーリング。
■柴田聡子「後悔」
“ああ、バッティングセンターで
スウィング見て以来
実は抱きしめたくなってた
ああ、ほほえみ合うだけで
何もかも忘れてただたのしいね”
一度聴いたら耳から離れない、本人いわく「トイザらス」をテーマにした中毒性高い3分ポップ。「関ジャム」の上半期ベストでtofubeatsが取り上げたこともあり、割と多くの人にも届いてるんじゃないでしょうか。こういう楽しそうな曲に後悔という曲名、オタクはこういうのにすぐ引っかかて好きになってしまう。
柴田聡子「後悔」(Official Video ) - YouTube
■スカート「離れて暮らす二人のために」
“離れて暮らす二人のために
電車は急ぐんだ”
メランコリックなアコースティクギターの旋律が導く、あまりに無垢な遠距離恋愛の歌。それ以上でも以下でもない。
■トリプルファイヤー「有名な病気」
“どこに出しても恥ずかしくない恋
誰も不快にさせることがない”
歌っている事は一見、恋愛ポルノへの批判とも読み取れるけど、自分の恋バナなんて想像させて気持ち悪いんじゃないかっていう自意識について歌ってるようにも感じる。最終的に“お前のは映画になるからいいじゃない”と逆ギレ。それでも面白いとかダメ人間とかより先にかっこいいって感想が浮かぶのが現在のトリプルファイヤーのいいとこですよね。本当に現在のトリプルファイヤーはかっこいい。
■宇多田ヒカル「あなた」
“あなた以外思い残さない
大概の問題は取るに足らない
多くは望まない 神様お願い
代わり映えない明日をください”
今年出した3曲で、一番好きなのは「Forevermore」なのですが、情念が一番色濃く出ているのはこの曲かなあ。そもそも復帰後の宇多田ヒカルの歌詞は全て情念って感じなんですけど…。映画主題歌ということで歌詞も「壮大な感じで」と注文が入ったのかもしれないですが上記の歌詞はすごい。脚韻も心地よい。
宇多田ヒカル 『あなた』(Short Version) - YouTube
■Xiu Xiu & Mitski「Between the Breaths」
映画「パーティで女の子に話しかけるには」のエンディング曲。
もうこれはとにかく映画がツボで、「異星人の女の子と恋に落ちるパンク少年」が話の大筋なんですが、つまり「Another Girl,Another Planet」であり、失速しなかった「荒川アンダーザブリッジ」なんですよ。そしてエンディングで流れるこの曲はこの映画のアンサーであると同時に、代表曲「Your Best American Girl」で歌われる異文化によるすれ違いを浄化するような内容で思わず涙ぐんでしまいましたね。
映画『パーティで女の子に話しかけるには』エンディングソング Mitski 「Between the Breaths」 - YouTube
■The XX「Dangerous」
“They say we're in danger
But I disagree
If proven wrong, shame on me
But you've had faith in me”
先ほどのような映画ED曲という例外を除けば、自分は日本語で恋する人なので、日本語の歌ばかりを選出してしまうのですが、The XXの3rdアルバム「I See You」を再生した瞬間に高らかに鳴る勇敢なホーンの響きに勇気づけられれしまう。それはポップの世界へ飛び出すバンドの決意の表れでもあり、恋に堕ちていく私たち(かしゆか含め)のファンファーレになるのです。それは万国共通であり、どこでもない場所で鳴り続ける。
The xx perform Dangerous in the Live Lounge - YouTube