People In The Box「Kodomo Rengou」

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People In The Boxデビュー10周年を締めくくる6thフルアルバム。

12曲60分超、これは「Weather Report」の約70分に次ぐ収録時間の長さ。「Weather Report」は全21曲を1トラックでまとめて収録されていることからも分かるようにアルバムの流れを強く意識しており多くのインタールードを挟んだが、今作「Kodomo Rengou」は1曲1曲じっくりと時間をかけて作られたよう。そのせいで過去最高に創作意欲が渦巻いており、濃密でイビツな仕上がり。それでいてテクを見せびらかす独善的な作品にならないのはポップ愛好家としての矜持か。どの曲も複雑な構造を持って、明確にサビといえるようなメロディも展開もないが、逆にそういった制約から解き放たれたメロディは優雅で中毒性は高い。その中でも特に気に入った曲はバックでうねうねいってるオープナー「報いの一日」、かつての「バースデイ」を超える単語の羅列が気持ち良い「町A」、ピアノリフがGoGo Penguinを連想させる「世界陸上」、美メロ炸裂ミドルテンポの傑作「動物になりたい」。

もはやバンドの立ち位置も、楽曲も、他のバンド・シーンと比べようにも、ねじれの位置にしかいなくて、心のどこへ置いたらいいのか分からなくなってしまうが、そういうバンドこそ、そしてこのアルバムをちゃんと好きといっておきたい。名盤です。