SHISHAMO「SHISHAMO 3」

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武道館公演をソールドアウトさせた3人組のガールズバンドの3rdアルバム。


 


信用しているネットの音楽好きの方々の中にSHISHAMOを好きな人が結構いたりして、自分も何度かチェックしたのですが、「良いけれど、これは自分の聴くような音楽ではないな」とひとりごちて、それで終わりでした。

しかしそんな自分がここ最近で一気に彼女たちの音楽に引き込まれることになるのですが、そのきっかけは今作収録曲「中庭の少女たち」のMVを川島小鳥(アルバムジャケもこの人だったんですね)が監督したということで、どんな映像か観てみたら、その映像の「乃木坂グループからはみ出た乃木坂っぷり」と音楽の親和性にノックアウトされた他ありません。
とりわけ宮崎朝子のヴォーカルは“バカだね バカだよ バカみたい”、“なんて、私だけなのかな?”のラインで顕著ですが、こういったセンチメンタルに対しての心の機微の表現がどうしようもなく女の子で、声色の的確さ含め素晴らしすぎますよね。25歳のおじさんはしどろもどろになるしかありません。



しかしまだこの段階では、SHISHAMOではなく「中庭の少女たち」が好きなおじさんです。しかしもちろん他の曲も気になる所で関連動画で出てきた昨夏の新機軸シングル「熱帯夜」のMVを観たのが運の尽き。Yogee New Wavesから陽気な要素を抜いたメロウでサーフなロックンロール。イントロからぶっぱなされました。安易な盛り上がりを避けた禁欲的なアレンジも効いていて、ゼロ年代後半から数多のロックバンドがこぞって失っていた色気を宿すことに成功していて感動。
自分の世代で「熱帯夜」といえばRIP SLYMEが9年前にリリースした下着の中にロマンを求めるスケベなヒップホップで、それはそれで(今でも)最高したが、今の10代はこんな禁欲的なロックンロールナンバーなんだと思うとそれはそれで最高だな。



他には「笑顔のとなり」、「恋ごころ」、「旅がえり」といった華やかより武骨さを選んだようなオルタナ・ロックナンバーが好きです。しかし叶わない恋とか冷めた恋とかそういう歌詞が多い事もあってaikoだなあ、と思ったら宮崎朝子のルーツはTheピーズとのことです。言われてみるとTheピーズはダメな男のブルースであると同時に、憂鬱なラブソングの名手でもありました。「どっかにいこー」とかサイコー。



いや、でもやっぱ女の子がまっすぐに歌ったときの輝きはすごいですね。もう自分は、たまたまネットサーフィンで見つけた窮鼠猫噛がはっちゃけってSHISHAMOは白けた表情をしているというネタ写真に、「これだから男はサムいしダメだな」とマジレスで差別思想をぶちまけてしまう始末。

そして何度でも言いたいので言うけれど、宮崎朝子のヴォーカリストとしての間違えて無さは素晴らしすぎる。ほら、もう「旅がえり」の“ねえ 私は元気にやってます”のアンニュイさとか。
同世代トップクラスの表現力をもったヴォーカルに、武骨なオルタナ・サウンド。その実力と女子力が十二分に発揮されたアルバム。男としてはありがたくいただく他ないよ。涙