入江陽「SF」

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ジャケットがすでにニューウェイヴ。

 



入江陽の待望のサードアルバムは、前作「仕事」のネオソウル歌謡の芯で渦巻いていたストレンジネスが、MTVの幻影を通過して、外へ咲き乱れた形になった。「シュール」だなんて便利で手垢まみれになったはずの言葉で、鮮度を持って形容できるのはこの人くらい。イリシット・ツボイ氏曰く「マジでかなりおかしな方向へ行ってるのに洒落ててPOPというかなり謎なアルバムで、2016年を代表するクレイジーなアルバム」。

“アンドロイド”と“あんころモチ”だったり、“お惣菜倶楽部”と“メイク・ラブ”だったりで韻を踏むなど入江陽のルーツである、井上陽水を彷彿させるシュールな言葉遣いも冴え渡っている。そもそも“お惣菜倶楽部”とは何なのか。「おひっこし」の“ギヴ・アンド・ギヴ・アンド・ギヴ・アンド・テイク”の異様なかっこよさよ。そもそもBrainfeederに通ずるドープさを茶化すようなトラックからしてトバしてる。先述した、このアルバムを象徴するMTVの幻影を通過したような「5月」、「STAR WARS」、「メイク・ラブ」もフリーキーな展開が含まれていて、一筋縄でいかない。もうそんなんばっか。でもってラストの「悪魔のガム」は不穏なグライム歌謡(!)という謎の着地を魅せる。

結局、何がどうなってるんだこのアルバム。