People In The Box「Calm Society」「Talky Organs」

 

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YOSHINORI OKADA on Twitter: "【並べてみた】People In The Box「Calm Society」「Talky Organs」 http://t.co/g7FjaYtqkO"

YOSHINORI OKADA on Twitter: "【並べてみた(裏)】People In The Box「Calm Society」「Talky Organs」
※中面は御自身の目でお確かめください。
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People In The Boxの今年リリースした連作2枚、シングル「Calm Society」とミニアルバム「Talky Organs」はすげえ傑作!ここにはもうピープルの音楽に慣れ親しんだ人々にはお馴染みのピープル節が鳴っているのだけれど、それでも再び初めて聴くような興奮がここに封じ込められている。

 
■「Calm Society」

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1曲目の「海はセメント」を主軸に展開するライブ会場・通販限定で発売されたマキシシングル。

約7分半揺蕩いながら穏やかに進むアコースティックな「海はセメント」がやはり白眉。しかし「Ave Materia」~「Wall,Window」までにあった牧歌的な雰囲気はなく、サウンドスケープだけでいえば初の全国流通盤「Rabbit Hole」の露悪趣味がエスカレートする手前のギターロックを思い出す人もいるかもしれない。ただ全く原点回帰といった印象はなく、どこかクラシカルに響く瞬間がある。そういえばThese New Puritansが宗教音楽やアンビエント諸々を取り入れた事による変容を称賛していたっけ。静寂の中で聴きたい1枚。





■「Talky Organs」

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そして夜へ、9月初めにリリースされた5thミニアルバム。

「空は機械仕掛け」のイントロで猛るスネアが流れてきた瞬間の興奮よ。「セラミック・ユース」の「パイロット、標的へ高度を下げろ」のラインにおけるThundercatを偶発的に連想させなくもないモコモコしたスラップベースのかっこよさはどうだ。轟音ギターと洗練されたピアノの音色のコントラストが印象的な、こちらは対照的に爆音で聴きたい1枚。プレイ・イット・ラウド。




People In The Boxは転調や変拍子、奇怪な歌詞を武器に“違和感”というスパイスをエンターテイメントとして表現してきた。かつて2008年にリリースされた「ヨーロッパ」という曲で「君の胸騒ぎが本当になるといいな」と声を荒げて叫んでいたが、それは言葉の意味をそのまま「未来への不穏な気配」と捉えるよりも、違和感をスパイスにしたエンターテイメントとしての興奮につながっていた。それは今作の「季節の子供」におけるアウトロなどに今も根付いている、はず。
しかしもはや現在では、不穏な気配は決して特別な感情などではなく、日々の営みの中で当然のように感じるようになってしまった。画像の中にだけあったグロテスク。今作における“違和感”は「新たなものに出会った興奮」と「未来への不穏な気配」が綯交ぜになっている。その両義性は震災以降の「Ave Materia」以降からすでに芽生えていた、と現在では思わなくもない。その両義性がこの2015年に奇跡的なバランスで着地した今作。再び初めて聴くような興奮がここに封じ込められている。