最近聴いてる夏っぽいの その3
きっかけはツイッターで見かけて聴いた「飛び込め‼」だった。時代錯誤ともいえるギターロックによる、都合よすぎる夏への郷愁。NUMBER GIRL「透明少女」、ART-SCHOOL「プールサイド」、真空メロウ「プールサイド」、the pillows「白い夏と緑の自転車、赤い髪と黒いギター」で高校時代を駆け抜けた俺の青春の亡霊が蘇る。そんな体験だった。
そこから「飛び込め‼」が収録された「ふれるところ、ささるとげ」を聴いたのだが、やはり俺の青春の亡霊が、ガールフレンドもいないし、真夜中のプールサイドにも忍び込んでもないのに、そんな青写真を追体験しているようなディストーショナルなギターロックの連なり。あまりに甘味で殺風景なモラトリアムの成れの果て。この窒息しそうな甘味さに魅了されるのに、うしろめたさを抱えながらも。
そして今月出たばかりの「198X」。
この作品もディストーショナルなギターロックによる青い夏の追憶ではあるのだが、甘味の表現から一歩引いた場所で鳴っている。ただそれは単に、慈しみのまなざしを与えるための俯瞰できる場所ではない。ここではないどこか。仇花のにおいもする。兎にも角にも奇妙なレコードだ。メンバーは「誰かのどこかの青春のシーンを僕らなりに閉じ込めた内容」と評しているが、それと同時に誰でもどこでもない青春のシーンでもある。共感も共有もできない故のワンダーさ。きっとそれは素敵なこと、音楽のはず。