SEKAI NO OWARI「Tree」

Tree(初回限定盤CD+DVD)

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まずこのアルバムの感想を書くにあたって、自分がSEKAI NO OWARIに抱えていたヘイトについて書いておきます。

自分がおよそSEKAI NO OWARIを嫌いだった理由は大きく分けて

・インナーサークル(セカオ輪)で傷を舐め合う、無駄にシリアスな歌詞が気に食わなかった。
・曲が平坦でつまらないのにアーティステックな態度を気取ってる。

の二つだった。周りのヲタク達がここぞとばかり叩いている内にそんな嫌気に嫌気がさしても。

とはいえアルバムリードトラックでもある「Dragon Night」は相変わらず正義がどうこうとのたまう部分が疎ましく歌詞カードを燃やしたくなるものの、「ムーンライト、スターリースカイ、ファイヤーバード」と歯切れの良い単語の連発の無意味性と偶像性に強く惹かれる。何よりライトファンタジーEDMな曲は「10年前から似たような曲ばっかじゃん!」と後ろ指さされる日本の音楽のメインストリームの大半に比べ、最先端の音楽と呼べる。それっておもしれえなって思って。

そして地上波への出演も増え順当に好感度を下げつつ、ついに出たアルバムの名前は「Tree」ときた。奇しくもマイ・フェイバリット・バンドであるGRAPEVINEが自分たちが世界の中心にいるようなモードにはもうならない事を認め「Burning Tree」と例えた傍らで、国民的になった音楽グループがその自信と過信を「Tree」に例えた。それっておもしれえなと思って。

さて、このアルバムは彼らが発信し続けたパズドラの如きインスタント・ライトファンタジーなパブリックイメージで満たされてる。更にそこから半歩踏み出して「ムーンライトステーション」ではちんどんのテイストまで飛び出す始末。そして「スノーマジックファンタジー」の「~それはなんか無視された」のくだりは「お前は何言ってるんだ」と揶揄される自分達への自己言及。そして「Dragon Night」に並ぶ今作ベストトラック「銀河系の悪夢」は曲の半分以上が街の雑踏SEとアコギの弾き語り、こんな芸もあるんだと感心しっぱなし。

その一方で何曲かは本当に平坦でつまらなかったけれど。あともっとオートチューンの曲、増えねえかな。オートチューン好きなんだよ。

古めかしいクリシェではありますが、「人々から後ろ指さされながら、セカオワは無邪気に傷を舐めあってたはずが孤立していって、それでも彼らなりに覚悟を持って桃源郷を作りあげた」という遊園地の演出、そのモンキービジネスっぷりがちょっと息苦しいですが。それでも演出に殉ずるその姿勢は、ロッキンオンジャパンやミュージカで載っている音楽の中でも断トツにスリリングでポジティブな存在だと思わせるには十分で、つまらない日本のメインストリームの音楽シーンで数少ない面白い存在ではないでしょうか。そう思う事含め、なんだか息苦しくもありますが。だってそれだけじゃない面白さに自分は予想外に楽しめたけれど、結局は十代の孤独に付け込んだモンキービジネスなんだし。