GRAPEVINE「Burning tree」

 

Burning tree (初回限定盤)

Burning tree (初回限定盤)

 

 

 


・アルバム発売して1週間くらいでスルメ(聴けば聴くほど深みが出るという意味)と評す感想をたまに目にする。今回のGRAPEVINEのスピードスター移籍後の初アルバムの感想をサーチしたら見かけたんだけど、さすがに早すぎるだろと思いつつ、自分もちょっとそう思ってしまった。なんというか、人懐っこくない。ひとつ壁を隔てているくらいの距離感。事務所移籍という環境の急激な変化もあり、アルバム間のインターバルが過去最長になり、かなり時間をかけて丁寧に創り上げたとの事ですが、その丁寧さに起因しているのかもしれない。そして安定の亀井メロが今回、特に炸裂しているので、一聴して分かる良さと聴きこむほど分かる良さの同居。

・また今回のアルバムは湿っぽい印象。というか「MISOGI」、「片側一車線の夢」といったカラッと乾いた風味のロックがないから相対的にそう思える。湿っぽいメロディが特徴の亀井作曲の歌が多いのも理由の一つだろうけど。くるり岸田っぽく言うと「曲の中に雨を降らす」。

・「ドラマーなのに」とか言わなくても、亀井の作るメロはメロウで素晴らしいなと再認識した。

・自分の場合、GRAPEVINEの歌詞は全体の意味よりパンチラインの連なりとして素晴らしいと思うのだけれど、そういった視点では過去最高に素晴らしい。「心まで誤魔化しても/何一つ放り出すつもりはない」(Weight)、「むなしき歌にして身を焦がしてゆくんだ」(Empty song)、「狂気であれ筋は通してきた」(IPA)、「感受性が我々の財産/ご時世それもどうかと思うが」(流転)
とどこかバンドが手にしたものに対する自信と諦念がにじみ出ていて良い。

・もしかしたらこのアルバムは空気感としてバンド史上一番ポジティブなレコードと呼べるのかもしれない。

・でも本当いうとこのアルバムについて全然言語化できてない。スルメアルバムだしね。ただもしかしたら自分の中では「another sky」「Twangs」に次いでバイン最上位のアルバムになりそう。