00年代邦楽ベストトラック

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学生生活も終わっちゃうね!モラトリアム!
というわけで学生時代を振り返る意味を込めて、自分が青春を主に過ごした00年代の邦楽のベストトラックを選んでみました。もうちょっと具体的に言うと2010年に大学生になったんで、小学校中学年から高校生の終わりまでですね。
洋楽入れなかったのは、大学生になってからやっと洋楽を聴く(聴ける)ようになったし、本当ロックンロール・リバイバルもディスコ・パンクもその重要性がよく分からずで、00年代の洋楽って自分の中じゃすごい影薄い存在なんですよ。あと00年代の邦楽ってこういうランキングが本当少ないからやってて楽しいのもある。

それぞれにコメントを付けていますが、どれも結局は「ポップでいい曲だね」というオチになっています。ではどうぞ。




 


30.the ARROWSロックンロール・ダンシングガール

僕の住んでいる名古屋出身のまあ、地元のバンドなのですが、GRAPEVINEの歌詞みたいに捻くれた姿勢が好きな自分としては、名古屋出身って聞くと逆に身構えてしまう。地元だと他の地方よりプッシュされますからね。
しかし当時読んでいたGRAPEVINE好きなブロガーさん等がthe ARROWSを褒めているのを見かけたりして聴いてみたら、すげえいい。夜の匂いがする音楽が好きな自分としてはストライクで、10年前にはもう存在していたこの曲の「最近思うのはロックンロールは 明るく 明るくなくっちゃ」ってフレーズは傷の舐めあう俯きがちな音楽が増えた現在だからこそ、祈りのように響く!


29.andymorieverything is my guitar

別に嫌いじゃない言葉…初期衝動が成せる業なんでしょう。気がちょっとだけ滅入るような風景を描写しつつも、「物語が始まるかもしれないんだよ」とこれからの予感を瑞々しく歌いあげ、乱打するドラムが気持ちを高ぶらせる。いや、やっぱこの頃のドラムはandymoriを象徴するものだと改めて思っちゃいますね。ドラマー交代後のandymoriも好きだから安易に比べたりはできないけど。


28.スネオヘアーワルツ

ナイーヴで哀愁漂う曲を得意としていたスネオヘアーがポップサイドへ振り切ったけれども決して淡さを手放さなかった・・・そんなパステル模様のJ-POP。ラジオから流れてきて一発で虜になりました。爽やかなシンセサイザーと曲名に反して三拍子じゃないオルタナっぷりが素敵。


27.ASA-CHANG&巡礼「

バックのストリングスや実は計算されているフリーキーなタブラ、一音ずつ声が離れている歌が一体となって聴き手をを精神の深淵へ引きずり込む日本の音楽のレフトフィールドリーサル・ウェポン。どういうジャンルかの音楽かといえばマントラが一番近いのかもしれない。それにしてもフルカワミキの声ってウィスパーボイスの中でも特に日本人の出す声って感じがする。


26.ASIAN KUNG-FU GENERATION新世紀のラブソング

ナンバーガールシンドロームって曲を作る位、ナンバガチルドレン(サウンドを誰かに例えるなら、むしろeastern youthな気もするが)の筆頭だったアジカンが、自分なりにヒップホップを咀嚼し作り上げたラブソング。
向井秀徳のヒップホップの解釈はブルーハーブDJ KRUSHのような強烈なストイシズムを感じさせるけど、ゴッチの解釈は参照点がBeck中心だからかあくまで緩くソフト・サイケのよう。これがまた中毒性高いんですよ。歌詞は結論を出したようで結局悩んだままのようででモヤモヤするんだけど、ここで業界や社会に対して悩んだ結果が一旦実を結び、「今を生きて」という最高の日常賛歌を生み出すんだな、これが。


25.SPARTA LOCALSトーキョウバレリーナ

ちょうど同時期に出たポストパンク・リバイバルと比べれば比べると、異色さが際立つ汗まみれの九州男児ストパンク。ナイーヴちゃあナイーヴな歌詞だけど、それよりも単語チョイスの面白さが際立っていて、この曲のサビのコーラスは「マイノリティー、マイノリティー」と自信ありげに歌い上げる様は間違いなくかっこいい、でも一番好きなのはブレイクの「ア・マ・ゾン!」。


24.東京事変群青日和

ムードを重視し過ぎるきらいがあったこの頃の椎名林檎だけど、シングルはキャッチーなものをリリースしていて、H是都M作曲のデビュー・シングルは特にキャッチーでガチャガチャしたハイパーなギターロック。ジュディマリになりそうでならないのは林檎嬢のムーディーな声のせいかね。

 
23.安藤裕子パラレル

疾走感という言葉はこの曲の為にあった!そう、ストリングスが絡むアッパーチューンは傑作というジンクスに倣って、バラードの印象が強い安藤裕子が自身のパブリックイメージに楯突いて生まれた傑作アッパーチューン。そしてこの曲の「きみが好き」は色んな歌の「君が好き」の中でも群を抜いて真っ直ぐに響く最良の「君が好き」の一つ。
あと全然そんなイメージなかったけどこの曲、海に行く曲でもあってポップって感じだ。海に行く事をモチーフにした創作物は皆ポップだと思います。


22.ART-SCHOOLニーナの為に

Pavementの録音状態の悪さは「人間ダメな時もあっていーじゃん」っていう気分にするけど、この時のART-SCHOOLの録音状態の悪さはただひたすら精神的な圧迫感や閉塞感を感じてしまう。そして木下理樹の呂律回ってない崩壊寸前のヴォーカルが壮絶にラブい。


21.BONNIE PINKA Perfect Sky

ボーイッシュなイメージを捨てて華やかに変身した「Tonight,the Night」を経て、今や過去の人となったエビちゃん出演CMソングとして自身最高売上を記録した最強夏ソング。CMのイメージに合わせて大人の女性の恋愛を意識したであろう「君の胸で泣かない/君に胸焦がさない」が10ccの「I'm not in love」の如く逆説的に恋に落ちそうで強がっている風に響く。そこがなんか少年的で可愛いよ、身長160cmらしいね。


20.宇多田ヒカル誰かの願いが叶うころ

シングルベストを挟んでリリースされた「音楽の可能性を様々な視野で探っていたら、辿り着いた境地はこれでした!」みたいなピアノとストリングスのシンプルな構成のミディアムバラード。
自分は映画「CASSHERN」の格好つけっぷりが好きだった事もあり、余計にシンプルなこのテーマソングにグッときます。
「誰かの願いが叶うころ あの娘が泣いてるよ」のフレーズはインパクトでかいけど、そこから「小さな地球が回るほど 優しさが身に付くよ」と落とす所がこの歌詞の重要な部分に思える。


19.AJICO波動

UAベンジーが中心になって作った短命バンドのファーストシングル。バンド名はなんとなく響きで付けたというエピソードのように、感覚的にジャムセッションで作り上げた結果、聴き手を呑み込みようなサイケで強大なグルーヴを生み出した。しかしこんな曲に「波動」って名前を付けられたら波動みたいだって思うしかないよな。


18.岡村靖幸真夜中のサイクリング

テーマが「真夜中のサイクリング」なのに、クラッカーと楽しそうな声、ホームパーティーみたいなSEから始まるこの曲。パーティーを抜け出して2人で真夜中のサイクリングをする・・・だなんて妄想は岡村ちゃんの十八番だけど、曲に込められたエネルギーの質が違う。「どぉなっちゃってんだよ」は120%フルスロットルでエネルギーを爆発させる文科系が考える熱血っぷりに対して、この曲は疲弊しきった身体で放つ最後っ屁のようで凄みがある。万遍なく出来るだけ祈るよ


17.ゆらゆら帝国美しい

「空洞です」のちょっと前の恍惚としたゆらゆら帝国流のディスコチューン。
リボンを結んだりして茶化しつつも歌われる「世の中なんてクソだ」って価値観はロックンロール以外何物でもないし、それは間違いなく美しい、だけどそれはクソだ。でも美しい。


16.THE HIGH-LOWS十四才

厨二病だなんて言葉に雑に回収される前から、ヒロトマーシーも思春期を過ごす少年少女の感情を正確に偶然に射抜いていたけれど、ヒロト自身最高傑作と言っていた6分を超えるこの曲では思春期を過ごす少年少女がロックンロールに出会った時の衝撃を慈しむように歌っていて、しかしそれってブルーハーツハイロウズクロマニヨンズに出会った衝撃そのものだよね!


15.SAKANABlind Moon

ギターとヴォーカルでの短編映画のように様々な世界を創り上げた名盤「Blind Moon」のタイトルチューンにしてアルバム中、最も緊張感溢れる曲。歌詞のテーマは誰もが生きている中で出会う周囲に妨げられている変な友達について。もう本当、この曲は聴いて官能してくださいとしか言えない。いや、ここに挙げた曲は皆、そうだけどさ。


14.髭(HiGE)ロックンロールと五人の囚人

歯切れの良い言葉でロックンロールの本質を射抜いた「言葉遊びで騙して ダーリン」ってフレーズだけでもうおれは満足だよ。腹持ちの良さもあって聴く度に同じ嘘に騙されるのが快感なんだ♪
この曲のタイトルのせいで、今でも髭は5人組のイメージ・・・ってフィリポ脱退したから今また5人組か。この前、キノシタナイトでアートの面々と一緒にプレイしたこの曲は本当、すげえ楽しかったなー。


13.フジファブリック銀河

確か当時ポルノグラフィティの新曲が流れるのを狙って今は亡きミュージックスクエアNHK-FM)を聞いてたいら、メンバーのコメント後にこの曲が流れてきたのが最初の出会いで、正直変な曲だと受け付けなかったんですが、「ユーエフオー」のコーラスが頭の中に強烈に残って離れなかった。
あれから月日が経ち、そして今、改めて聴いてもやっぱ変な曲だなあと。よく考えたら、「音楽は大であれ小であれ変じゃないと」って信じるようになった最初の一歩なのかも。


12.キリンジエイリアンズ

FROM THE SUBURBS.
地域主義が徐々に浸透し始めている現代だからこそ訴求性は高まっている曲。
まあ、そんな畏まった言い方をせずに、作曲者が佐野元春のザ・ソングライターズで言っていた"つまらない街の風景もロマンチックなものに出来るんじゃないか"という想いがこの曲を端的に表している。そう、やっぱり音楽にはロマンがないと。


11.ROSSO「シャロン

チバユウスケ照井利幸を中心に結成されたロックンロールバンドの「サンタクロースが死んだ朝に」と始まるただひたすらリリカルでカッコいいロックンロール。「カーブを曲がりたくなかった」「ねぇ冬の星に生まれたらシャロンみたいになれたかな」「あの娘はきっとパルコにでも行って今頃は茶髪と眠ってるだろう」とチバの筆は冴えわたっていて、クリスマスシーズンやパルコに行った時につい聴きたくなるね。あとクリスマスに気になってた女の子とデート(っぽい事を)して後日「2人でいる時はつまらない」と言われた時も聴いてたのでそれも思い出すね。あっちは覚えてないだろうけど。


10.People In The Box月曜日/無菌室

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ただ、いい曲を書こうとして出来上がったメジャー最初の作品のリード曲にして、ダークな感触のバラード。ピープルにしては珍しくそこまで遊んでないので、バンドの体温を感じやすい。
セカイ系風味の歌詞だけれども、サビのフレーズは最初「指を重ねて/地図をなぞって/僕ら世界をゆすった」だけど、最後には「指を重ねて/地図をなぞって/だけどそこには何もなくて」と。これは世界を混乱させようとシュールな言葉遣いで挑む(そしてそれは失敗に終える)実はすごくロック精神に則った歌詞と解釈していて、そう考えたら最初の「太陽の中で愛されたら」だってHigher than the Sunだと思えなくもない。
まあ、ピープルは贔屓目で見てしまうんでTOP10には入れておけって感じで。何にせよいい曲です。


9.EGO-WRAPPIN'「サイコアナルシス

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密閉したキャバレーの匂い漂わすロカビリー・ジャズ、否が応でも躁!にならずにはいられな い。最初の「フィーバー!」とか「ノスタルジア!」とか「俺はシラフだ!酔ってるのは路面~」とか!マーク付け足したくなるフックばかり。中納さんのコブシの効いたボーカルも濃厚でおなかパンパンになっちゃう。ゲッフ。


8.Polaris季節

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正確に刻まれるリズムと柔いボーカルが白昼夢へと誘う唯一無二のダブポップ。この曲に限らずPolarisの音楽が併せ持つ日常性と非日常性は、聴いてると心が豊かになるね。このヌクモリティーをダブで作り上げた事にダブ好きじゃない自分は賛美を送りたい。
高校時代にショートバージョンである「季節(Broadcast)」の音源を持っていなかったために無理やり10分近くあるこの曲を切り取って、高校の卒業用動画に使った思い出。


7.Syrup16gex.人間

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ポリスのシンクロニシティーをロールモデルにしているHELL-SEEにおいての「見つめていたい」。いや、だからってこんな不穏な曲で出来るものなのか。「これは僕の作品です/愛すべき作品です/誰に何言われても/恐いものなどありません」と自信なさげに歌う二面性が肝であり、シロップフォロワーが見逃しがちな部分だったり。


6.The Mirrazcheck it out!check it out!check it out!check it out!

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「ビースティやアクモンからパクろうが、それが鳴らしたい音楽なら鳴らせばいい」っていうリリックの衝撃の自分のリスナー史に与えた影響は相当強くて、洋楽に影響を受けた邦楽ばかり好きだと気付いて、そこから「GRAPEVINEだったらWilco」、「People In The BoxだったらFiona Apple」と影響受けた洋楽ミュージシャンを聴くようになったきっかけは間違いなくこの曲に一因がある。シビれたっちゅうわけです。
前に音楽に歴史的参照が必要か?みたいなエントリーがあったけど、ロックの歴史的参照の必要性をシーンにある程度取り戻したのは、この頃のミイラズの姿勢と働きが相当大きいのではないかと思ってる。あと有吉の悪役プロレスラーっぷりと重なる部分もあって本気で天下取ると目を輝かせて思ってた。その内、ミイラズもスピッツでいうロビンソン・ポジションの曲を出すんじゃないかという一握りの希望はまだ残っているのだけど。「この惑星のすべて」にザッツ期待。


5.Perfumeチョコレイト・ディスコ

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ヤスタカ含めあどけない少年性を残してた頃のちょっと異色な代表曲。アイドル聴く事が恥ずかしかった時代にアイドル界隈で揶揄される事が多い「楽曲派」という理由(言い訳)を作って聴く機会を生んだ功績はなんだかんだ大きい。その後の昨今のアイドルブームの一因を生み落して、そしてアイドルと呼んでいいのか分からない新たなステージへと足を進んだ。ちなみにのっちが一番好きです、理由はこれ



4.MO'SOME TONEBENDER「ペチカ(long flight ver.)」

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色々な事をやっているバンドだけどハードコアが得意なイメージのあるモーサムの、ほっこりと温かい気持ちにさせる師走の名曲。日常の様々な瞬間を切り取った歌詞の中でもサビの鳥人間コンテスト(!)の部分はギターも相まって天にも昇るよう。


3.NUMBER GIRLNUM-AMI-DABUTZ

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ポップ・グループの曲を下敷きにした程度の事実では全く揺らがない強烈な音鳴り。ナンバーガールがノイズロックやヒップホップ、実験音楽を咀嚼してたどり着いた極地。そこで得たものは後のZAZEN BOYSは引き継がれていくのだけれども、だけども血管ぶち切れそうになるギターノイズやドカドカ鳴らすドラムス、アヒトイナザワとやっぱり強烈で、今聴いても真の意味でオルタナティブ


2.THA BLUE HERB未来は俺等の手の中

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トリビュート盤云々のエピソードはもう色んな方が語ってるから、それは各自で調べてもらうとして、やっぱりBOSSの実体験に基づいた歌詞が素晴らしい。ここまで自分の置かれた惨めで辛い状況と誇りを一級のユーモアを交えてラップしてくれるとは、なんてリスナー想いなんだろう。「OK余裕 未来は俺等の手の中」というフレーズは、自分が辛い状況に置かれた時には脳内で何回もリフレインさせたい。ダウンテンポで変則的なドラムが時折爆発するトラックもただひたすら空気を研ぎ澄ませる。心の支え。


1.くるりワールズエンド・スーパーノヴァ

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iPodで音楽聴くのが好きで、家の誰も見てない所で疲れない程度に身体を揺らすことができる音楽がポップミュージックの理想だと信じているのが僕という人間で。そしてこのファンキーなハウスミュージックにはビートマシンになってただひたすら身体を揺らし続ける喜びや寂しさが全て詰まっている。歌詞もそのままビートマシンになって身体を揺らすことについて。まあ、ビートマシンって言い回しを自分がこの歌詞からパクっているから当然だけど。やはり音楽そのものについて歌う自己言及ものには弱い、しかもそれが至高の音楽なら尚更。メタとベタの相乗効果はいいもんだなあ。音楽の名のもとに。



というわけでもうすぐ社会人になる自分の最後っ屁企画終了です。
SIKEI-MUSICさんが年の始まりに投稿した「90年代ベストトラック」の記事を参考にしつつ、あと周りの評価から影響受けながら選定しました。
これから先は昆虫キッズ、ホラーズ、clipping.の新譜に期待しながら社会の荒波にもまれていきたいと思います。頑張るぞ。